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単勝馬券の支持率と的中率の関係(1)

[久しぶりの更新です。ご無沙汰しています]

さて、前にも少し話をしたのだが、単勝馬券の支持率はその馬がどれだけの確率で勝つかを示すよい指標となりうる。日本中央競馬会の1995年から2007年までのデータを用いて、実際にそのことを示すことにしよう。

的中率と支持率

それぞれの単勝馬券の的中率を、単勝馬券を支持率5%ごと(支持率0-5%、支持率5-10%・・・といった感じ)に分類してならべたものが上の図である。点々が単勝支持率と的中率の関係を表している。黒い直線に完全に乗っていれば、単勝支持率が的中率をよく表しているということを意味している。例えば、20%の支持率である単勝馬券のうち約20%が的中しているということを意味している。

この図をみると、少なくとも二つのことがすぐにわかる。ひとつは、支持率が65%以下の場合には、だいたい支持率と馬券の的中率が対応しているということである。ここでは、5%刻みであらっぽく分類しているが、高橋正視さんが述べているように、単勝支持率3%の馬券を集めてきたら、その馬券の的中率は3%、単勝支持率5%の馬券を集めてきたら、その馬券の的中率は5%といった具合になっている。馬券購入者全体としては、おおよそ的中率をよくわきまえて馬券を購入していると考えられる。(ただし、すぐあとの項で、これは必ずしも「完全な」確率の予想ではない可能性が残されていることを指摘する)

もうひとつ、65%を超える場合には支持率よりも的中率が大きくなるということである。しかし、少し考えてみるとこれは馬券行動学的に説明がつく現象である。というのは、この当時、単勝支持率が73.9%を超えた時点でオッズは1.0倍となり、的中しても掛け金がそのまま返ってくる、いわゆる「100円元返し」になっていたからだ。ある馬が圧倒的に実力を持っていて、勝つことが分かっていた多くの人も、儲けられないことが分かっていたので必然的にその馬の単勝を買わない、という状況が出来上がっていた。だから、支持率は的中率よりも低くなっていたと考えられるのである。

馬券購入者の平均的な購入心理というのは、ここに見られるように、基本的には実利に根差したものであることが多い。儲かると考えられる馬券を購入したいと考えるために、それが実際の投票行動に大きくつながってくるのである。当たり前、と言ってしまえばそれまでなのだが、このように冷徹な投票行動ばかりが見られるわけではない。馬券購入者というのは神頼みになってしまったり、自暴自棄になってしまったり、総員としての思い違いがあったりして、実際の的中率を大外ししてしまったりすることも少なくないはずで、実際にそのような関係もデータから見ることができるのであるが、それはまたのちの話である。
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「ファンダメンタル分析」と「テクニカル分析」

[すいません,前回と全然関係ない内容になっております。思いついたとおり書いていますので。まとまったら,順序どおり並べます]

"Racetrack Betting"の冒頭(page 2)にも述べられている通り,競馬の的中確率を分析し,的中率・回収率の向上を目指すという意味では二つの方向性がありえる.ひとつは「ファンダメンタル分析(Fundamental Analysis)」,そしてもう一つは「テクニカル分析(Technical Analysis)」である.「ファンダメンタル分析」というのは,馬の勝利や着タイムといった結果に対してどのような要因が寄与していたかを調べる方法である.例えば,「血統」や「騎手の能力」など,さまざまなものが考えられる.それに対して,「テクニカル分析」というのは,いうなればオッズや支持率といった「馬の人気」にそれらの要因はすべて込められており,それらを追うことで実態は把握できるという立場である.これらの用語は本来,株価の分析に対して用いられている単語なのであるが,ほぼ同様の意味合いで競馬の統計解析に応用することができる.

最初のほうで,簡単な確率予測モデルの話をしたが,実は確率を計算する上で,私は一切,馬に関する性質を議論していないのに,予測モデルが構築できることを示した.これは実は「テクニカル分析」の立場で構築を行ったことになる.

補足:『真の確率』について考える

[ごく当たり前の内容かもしれませんが許してください]

少し誤解を招きかねない箇所があったので,コメントしておく.

(1)「ちゃんと期待値の高い馬券を選んで購入していれば,高い回収率に落ち着く」というのは,あくまで,そういう人もいる,という意味である.もちろんその分低い回収率に落ち着く人もいるわけである.全体としてみればJRAは「絶対に」損をすることはない.オッズはJRAが損をしないように変動するのであって,オッズを変えてしまうぐらいに大量に馬券を購入してしまえば,せっかく期待値の高い馬券を買っていても,確定オッズを下げてしまう.

(2)『「18頭立ての三連単は4896通りだから,三連単の馬券が当たる確率は4896分の1だ」なんていう意見があるけれど,これはまったくもって嘘っぱちである。』
と書いたのだが,もちろん真の確率に照らし合わせれば,という意味である.オッズなどの情報も一切なしに,番号だけを無作為抽出した場合にはその馬券の当たる確率は,その当事者にとって当たる確率は4896分の1であるとも言える.しかし,これは「真の確率」が4896分の1だということを意味するわけではない.「全く情報がないので,全ての場合について同じ可能性があると仮定したもとで算出される確率が4896分の1」なのであって,期待値の高い馬券と低い馬券をより分けるという意味では全く意味がない.いうなれば,神様が振るサイコロの目が隠されているので,しょうがないから,全部に均等に別々の目が書いてあると思うことに他ならない。

『真の確率』について考える(4)

だらだらと書いてきたが,では「真の確率」に近い確率はどのようにして出力すればよいのだろうか.

「センス」という答えはもちろんありえる.人には説明できない直感的なもので馬のよしあしを見抜き,確率を決定するという人もきっとある程度はいることだろう.

ぼくは,そうではなく,数字として指標化できるものを用いて,真の確率に近いものを客観的に数値化して得ることを目的としている.これによって,競馬の「予想の楽しさ」は半減させられてしまう反面(*),自動化・効率化・回収率の向上というメリットが得られてしまうのである.

この場合,われわれが見積もる確率は,それぞれのファクターに対して数値化されることになる.そのファクターは非常に多岐にわたる.まずはレースの特性として「馬場状態」「天候」「距離」「ダートor芝」などがあり,各馬の性質をあらわす数値(あるいは数値化できる量)としては「前レースの着順」「騎手の能力」「調教時のタイム」「単勝オッズ」「(数値化するのは若干難しい)血統」などなど非常に多くの要素がありえる.パソコンで確率予想をするときには,基本的にはこれらの要素の組み合わせから計算することになる.競馬新聞をみて,過去のレースの様子から勝つ馬を当てるという作業は,これを経験的にやっているといえるだろう.

ちまたには,確率的予想に関していくつかのコンピュータ指数があふれている.どのシステムが最もよいのかというのは多くの人が興味を持つところであろう.どの組み合わせが回収率を上げるのにいいのかをそれなりに客観的に評価することは可能なのであるが,そのためには「最大対数尤度理論」「情報量基準」という,結構数学的にハードな壁を乗り越えなくてはならない(**).そこで,「最大対数尤度理論」「情報量基準」を用いた評価の議論の前に,先にもチラッと述べたのであるが,まずはじめにごく簡単な「単勝の勝率=単勝の支持率」という仮定をおいてシステムを構築することにしよう.すぐあとに見るように,この仮定はあたかも真の確率を表しているかのごとく,よい近似となっていることが示される.


*ぼく自身は自分のシステムをよりよくすることを楽しんでやっている.ただ,純粋に「競馬を楽しむ」というよりは「数学として楽しい」ということであり,使う立場としてみれば「儲かるから楽しい」ということになる.もちろん,たまには競馬場に行って競馬新聞片手に馬の様子を見ながら馬券を買い,レースに興奮したりもする.これらは,当然のことながら,まったく別種の楽しみ方である。

**この理論を使うことの意味を簡単に述べておくと,「真の確率に近い確率モデルは,結果として得られているデータとより『合っている』べきである」「データが多くないときには,信用できるファクターの数も減らさねばならない」ということである.

『真の確率』について考える(3)

というわけで,ここから先は確率論的な世界にわれわれがいるとして話を進めて行きたい.要するに,神様ですら「どいつが勝つかわからない」.

けれど,そうだとしてもわれわれと神様の間には大きな隔たりがある.神様は「真の確率」を知っているのに対して,われわれにはそれすらわからない,ということである.「真の確率」を知っているならば,先に述べた期待値が1を超えているような馬券を購入していけば,当たり外れはあっても,続けるうちにどんどん儲かっていくことになる.ところが,そんな確率はカンタンにわかりっこないのである.

逆に言うと,どんな馬券の買い方をしても長いこと買い続けていればテラ銭(控除率)を引かれたぐらいの回収率に落ち着くというのも俗説である.経験に基づいてでも数式を使ってでもなんででも「真の確率」に近いものが予想できており,期待値が高い馬をきちんと選び出すことが出来ていれば,長期間馬券を買っていても高い回収率に落ち着く.(ここで注意しなければならないのは,きちんと儲けを出すためには「勝つ確率が高い馬」を当てるのではなく「期待値が高い馬」を当てなければならないという点である.たとえ勝つ確率が高い馬でもオッズが不当に低い場合には買うべきではない)

オッズは基本的には購入前にわかる値であるから(実は確定オッズとの差異も大きな問題といえようが),結局,問題は「真の確率」に近いものをどう算出するかという点に絞られるのである.
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